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そう違和感を抱かないのは、今現在自分がいる空間が暖かいからだろう。
寒空の下、白い息を吐きながらも仄かに汗を湛えている一団が窓の下を通り過ぎていく。
寒さなど感じさせない動きやすい服装。
唯一暖房器具が生徒の為に支給される生徒会室の中であればしてもいいと思うが、外であの格好は頼まれても嫌だ。
「----」
一団は裏門を曲がると姿が見えなくなった。
「浦田?」
名前を呼ばれていたらしい。気付いた途端に指の間からシャープペンシルが落ちる。
「ぼぉっとして何を見てたんだ?」
「・・・・・・・秘密です」
生徒会長である小国敦志(オグニアツシ)は机の上に腰掛け、新聞部から提出された部報のチェックを行っていた。
生徒会室に来た時には、まだ授業が行われているのか誰もいなかったのにいつの間に……彼が入ってきたことにさえ気付かないほどに、外に魅入っていたようだ。
「気になるなぁ~冷静沈着の浦田が心ここにあらずって顔して外眺めてる理由」
「対したことではないです」
室内には会長の姿しか見えない。
卒業式も一ヶ月と少しに控えているのに、この集まりの悪さは……。
「小国先輩、他のメンバーは?」
「あぁ、補習。ちなみに、他の一年は?」
「さぼりです」
「まぁ、毎日顔出すもんでもねぇしな」
彼はそう気にした様子もなく笑う。
何度も詰めて確認をしなくては安心しない自分なので、心配ばかりしてしまう。
だからと言って彼が能天気という訳ではない。飄々とした顔をして、下準備も詰めも完璧にこなしてしまう人間なのだ。
だから彼に言葉を貰うと安心するのかもしれない。
「ところで、浦田。あのこと考えてくれたか?」
「何度も言いますが、俺は表に立つ人間じゃないですよ。こうやって裏で使われる方が性に合います」
卒業式、入学式が終わると、次は次期会長を決める選挙だ。あと四ヶ月ほどで彼も生徒会長の任を降りる。
別に生徒会の仕事が煩わしいとかは思わないので、乞われれば残ろうと思っているのだが、彼は自分を生徒会長にっと押してきた。
「わかっちゃいるんだけどなぁ~浦田がしてくれると俺が安心するって言うかさ」
確かに、実務の大半は把握しているのでスムーズに意向はできるだろう。

「何事も無く、平穏に執行していくことはできますが、俺は海図の無い場所では舵を取れないタイプなんです」

彼が読み終わった新聞に目を通す。内容にチェックを入れるのが彼ならば、俺が見るのは文法やら誤字脱字。OBにも配られる為、適当なものは作れない。
「またふられたかぁ~」
「心配されないでも、自然と適任が立つものだと思います」
現会長である彼も、一年の時から生徒会を経験していた訳ではないし、先生の推薦があった訳でもない。
「浦田はそう思うか?また俺みたいに何も知らない会長が立つと大変だぞ」
「いいんですよ、実務は俺がしますから。会長はしっかりと舵を持って、水夫の指揮を高めてくれればそれで十分だと俺は思います」
俺は海図の判っている、穏やかな海しか航海することはできない。情報だけで新天地を探し出す、マゼランのような船長にはなれない。
「ちぇっ、浦田の意識を奪うほどの秘密でも握れれば脅すのになぁ~」
物騒なことを言いながら、窓の外を食い入るように見ている。
第二運動場ではサッカー部が練習前のウォーミングアップをしている。
帰宅部の生徒達がバス停や自転車置場を目指している。
普段となんら変わりの無い景色。まだ軽装に身を包んだ一団は戻ってこない。
「弱みになるようなものは、何も無いですよ」
窓の外を覗きながら、彰は笑った。

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