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無言とは時としてとても効果的だ。
屋上に集まった俺達。今年は暖冬であったので忘れていたが、冬の外はとても寒い。
それでも事の成り行きを聞きたくて、俺達はここに集まった。
3人の視線を集めるのは俯いたままの平良。
いつもハキハキと自分の意見を述べ、皆が嫌がる学級委員までやってのける。だからと言って敬遠されるような存在ではなく、平良はとても親しみやすい。
「だぁぁぁぁっ、どうして黙ってんだよっ。気になって悶え死ぬっての」
沈黙に耐えられなくなったのは、想像通り俊だった。
「馬鹿俊。お前にはデリカシーってのがないぞ」
恵胡も痺れを切らしかけていたのかもしれない、俊に突っ込む言葉に張りがない。
「………悪い。意外に俺って純情だったらしくてさ、どうも恥ずかしい……」
寒い所為だけではないはずだ。平良の頬や鼻の頭が真っ赤になっているのは。
「まずは友達からって言われた」
「かぁ~~っ、そいつ見る目ねぇぞ」
俊が派手に後ろに倒れる。
昨日の放課後、俊と俊の想い人である他校の女子が初めて二人だけでデートしたのだ。
メールや電話なども頻繁に交していたらしいし、平良としてはチャンスと思ったのだろう。行く前から気持ちを伝えるっと意気込んでいた。
「いや、俺が悪いんだ。初めて二人で出かけたのに、まだ早すぎた」
言い終えてすっきりした顔の平良は、どこか照れながらも嬉しそうだった。
「別に拒まれた訳じゃないだろ?これから友達として知って行きたい」
「やべぇ!平良、お前いい男過ぎ。ちょっと惚れようか?」
「きもい……折角なら彰や恵胡の方がいい」
「アウチッ!俊ちゃんショック!!」
腹筋のみで起き上がった俊は、再び派手に寝転がる。
「コンクリ寒いってぇ~」
「しょうがないなぁ~俺が温めてやるっ!」
そう言って恵胡が俊の腹に座る。俊の鈍い声を合図に、2人のプロレスが始まった。
「正直安心しているんだ」
「何が?」
平良が俺にだけポツリと漏らした。2人はお互いの騒ぎ声に聞こえていない。
「彼女が直ぐにOKをしなかったことが。少し冷静になって、彼女という人を真っ直ぐに見る時間をくれたんだと思っている。どこか恋に恋していた節があるのを否定できないからな」
平良がとても優しく笑う。
なんかいいな、と思った。隠し切れない溢れ出る想い。
昨日の恵胡の顔が思い浮かんだ。あいつもとても嬉しそうに笑ったっけ。きっと好きな奴に名前を呼ばれたシーンを思い浮かべてたんだろう。
「これからだな」
「おう、これからが勝負だ!」
力強く拳を振り上げて、平良もプロレスに加わる。
あどけない表情の彼らが放つ穏やかで満ち満ちた表情。いつか俺もあんな顔で笑える日がくるのだろうか?
まだ今は想像できない日のこと。

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