お題に挑戦しながら日々精進用
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5月2日(水)
「叔父さんが町の小さな電気屋やっててさ、そこに遊びに行った時、トランジスタとかダイオードとか、ハンダ付けさせてもらったのがきっかけかな」
そう、きっかけなんて些細なものかもしれない。
明日から始まる連休の天気は心配しなくていいと言うように、晴れ渡った空の下。
サッカーに夢中になっている同級生を眺めながら、珍しく恵胡が俺の隣に座った。
一番に動き回りそうな彼も、明日からの連休を寂しがっているのかもしれないと勝手に思った自分に照れ臭くなる。
何事にも楽しそうに取り組む彼に、道具を与えたくなった叔父さんの気持ちがわからなくもない。
無邪気なその笑顔を見たら、さらに彼の喜ぶことをしてあげたくなるはずだ。
「漠然と電気回路だとか、基板だとかに興味があった。で、彰は?」
「…………なんでだったか」
「忘れたの!?」
高校選択は、最初の大きな運命の分かれ道だ。
特に、専門分野に特化した高校を選ぶ事はこれからの人生の進む分野も決まってくる。
普通校を考えなかった訳ではない。成績だっていい方だったし、学級委員も生徒会役員も勤め上げた。
狙おうと思えば推薦だって勝ち取れた。
なんでだったっけ…………ぼんやりと、澄み渡った空を見上げる。
そこには、薄らと昼間の月が消えそうな姿をして浮かんでいた。
「顕微鏡……作ってみたかったんだ」
忘れていたこと。
そうだ…………確かに、そう思った時期があったからこの進路を選んだのだ。
「今あるものより、さらに小さなものを見ることが出来る電子顕微鏡を作りたかった。そして、物質の最小単位のさらに内部を見てみたかったんだ」
中学校の理科の授業中。やる気の無さそうな高齢教師の説明を聞きながら、自分の持った仮説を確かめたくなった。
なんてロマンティストな仮説だと思ったが、そうであって欲しいとも思えた。
「なんか、彰色々考えてるんだぁ~」
「物質って何で出来てるか?」
「へっ?」
空から恵胡に視線を落とすと、わざとらしく目線が泳ぐ。
「プラスを帯びた陽子の周りを、マイナスを帯びた電子が回ってる。その図を見て、宇宙に見えたんだ」
「宇宙?」
「太陽の周りを回る惑星、もしかしたら、自分達を形成する最小の物の中に宇宙が潜んでるんじゃないかって思った」
そんなこと……ありえないと思いながらも、自分の中に広がる無数の宇宙を感じて漠然と恐怖や喜びを覚えた。
「それを確かめてみたくなった。可笑しいだろ?」
「全然、それが俺と彰の出会うきっかけの一つだろ?俺、絶対忘れない!」
自分を形成する些細な話。
それに対して幸せそうに笑う恵胡。
面白味も何も無いと思っていた自分の生きてきた道だが、無性に幸せなものと思えてきた。***********************
昔、科学の授業を受けながら漠然と思ったこと。
誰か証明してくれないかなぁ~(笑)
理科系の授業には萌えが含まれていると昔から思います。もう一回授業を受けなおしたい……もっと萌えを発見したかった(ぁ
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