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4月29日(日)
 
季節が変わって、随分と日が沈むのが遅くなった。
それでも一緒にいる時間が足りないと思うのは贅沢だろうか。
デートしようという恵胡の言葉に、悪態をつきながらも従う俺を見て恵胡は嬉しそうに笑った。
その笑顔の意味は自覚しているので、取り合えず一日中恵胡を困らせるような我侭を言ってやった。
 
落ち着いてしまえばなんて事無い。
自分の行動を思い出して酷く恥ずかしくなるが、あそこまで焦っていたことが可笑しく思える。
そして……その焦りをあれだけの短時間で抑制した恵胡という存在の大きさを実感した。
勿論、口には出す訳ないが。
 
「今日はやっぱり、帰っちゃうんだよね?」
恵胡が閉めに行きたい場所があると言って連れてこられたのは、ダム沿いの公園。
人通りの少ない歩道を、二人で指を絡めて歩いた。
恥ずかしいと連呼する俺に、捨てられた犬みたいな目を向ける恵胡がいたから渋々付き合っただけだ。本意じゃない…………はずだ。
「身の危機を感じるからな」
「えぇ~」
そう言って抱き付いてくる恵胡の頭をはたく。
俺が本調子に戻る事に比例するように、恵胡もいつもの調子を取り戻していった。
嬉しいようだが…………まだ覚悟はできていないのだ。
昨夜は唇を重ねるだけで済んだが、お互い完全復活している今は非常に危ない。
賢明な判断だと俺は思う。
「ざんね~ん。ま、ゆっくりと待ってるからさ」
夕日が山の後ろに隠れても、まだ何処と無く明るい。
表情の濃淡の違いが、更に明確になっている気がする。
やっぱり恵胡は強くて優しい奴だと再確認している自分がいる。
先日から馬鹿みたいに恵胡のいいところばかり見えて困る。小言や嫌味を実際言っているが、以前のように批判の念が篭っている訳ではない。言わずにいれないだけで、不快を感じないあたり恋は盲目という言葉がぴったりだ。
「あ、ほら、彰見て」
恵胡は指差すのは、水を湛えたダム。
これから夜になり、日の光を浴びないそれは深い闇の色を描くはずなのだが…………。
 
「綺麗」
 
太陽の沈んだ空よりも明るい湖畔。
まるで天と地がお互いの居場所を間違えたかのようだ。
淡く、白い光を内部に湛えている姿に、太陽はこの中に沈んだのではないかという錯覚を覚える。
 
「綺麗だろ。なんでかは知んないけど、沈んだ直ぐの少しだけ、こうやって光るみたいに見える」
 
実際に光っているのではないか?
そう聞きたくなったが、恵胡が答えを知っているはずがないのでやめておいた。
晴れた日の海は驚くほど青い。曇った日の海は何故か灰色。海は光を、太陽を受けて色をつけていると科学の授業で聞いたような気がする。
もしかしたら、受けた光を少しだけ体内に蓄えるのかもしれない。
 
絡んでいる指先に力を込める。
同じ高さの肩、頭、指先。
返事をするように篭る力にそちらを向けば、穏やかな表情をした恵胡が近付いてくる。
瞳は閉じない。口付けではない気がしたから。
音ではなく響きとして、額同士がぶつかる振動を感じる。
笑った彼に釣られて俺も笑う。
恵胡が太陽なら、俺は海だろうか?
もしも太陽も、海に色を与える為に光っているのならばそれでも悪くないと思えた。
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