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4月27日(金)
 
ポテトとコーラ。
体に悪そうだからではない、手が全く付けられていないのは。
頼んだはいいが、食欲が湧いてこない。
駅前のファーストフード店。
朝からコインロッカーに入れていた荷物を持って、俺は窓の外を眺めていた。
 
『なぁ、恵胡と彰、出来てるって噂だぜ、まぢ俊ちゃんだけのけ者ってどういうことぉ~』
 
身をくねらせながら唇を尖らせる俊に、勘の良い平良が直ぐに悪乗りをしてみせた。
恵胡も冗談のようにさらに俺との距離を縮め、俊がそれに冗談を重ねる。
その様子を見ていた所為か今日になって視線はぱったりとなくなった。
人の噂はなんたらと言うが、あっと言う間の収拾に逆に拍子抜けしたくらいだ。
 
どうしたい、と聞かれた。
別に人の迷惑になるようなことはしていない。ただ…………ただ好き合っているだけ。
それが同性だったというだけ。
後ろ指さされる覚えは無い、堂々としていていいじゃないか…………そう考えるのに。
『隠したい』
口から漏れたのは逃げの言葉。
 
俊の言葉に一瞬だけ恵胡の瞳が揺れた。
それでもあいつは笑って俊の作戦に乗ってきた。その日の帰り道も、その話題には触れてこなかった。
 
窓の外を、先ほどから何組も腕を組んだ、手を繋いだ、少し距離を置いたカップル達が通る。
付き合い始めなのかぎこちない二人、熟年のように離れているようで阿吽の呼吸を醸しだす二人、もう関係が危ういのか意識が別の方向に向いている二人…………どんなカップルでも、堂々と付き合っている二人だと主張している。
人がいないことを確認して触れる指先、愛の言葉……もしも、俺が女なら、恵胡が女なら、どちらかが女なら堂々とすることができるのだろう。
誰にも囁かれることなく、堂々と。
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