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4月23日(月)
「浦田!コーヒー買ってきて!!」
珍しくイライラとしている様子の小国先輩から渡された120円を握り、俺は1階にある自販機を目指した。
ミュシャの描いた白のカフェオレ、とのことだったが正直良くわからなかった。
まぁ、白と描いたというキーワードさえあれば十分かという予想があたり、自販機につくと一発でどれだかがわかった。
綿密な絵画のパッケージの缶ジュースが3種。その中で白は1種しかなかった。
応援演説を明後日に控えてるとはいえ、大きな式典前ほどは忙しくない。
生徒指導的にも、生徒会まで悩ませるほどの問題は起きていない。
滅多に声も荒げない小国先輩としては、本当に珍しい。
「お、いたいた」
自販機を離れてすぐ、浅田先輩がこちらへ向かって歩いてきていることに気付いた。
あちらも俺の姿を見つけて軽く手を振ったことから、目的が自分である事が窺える。
柔道部の主将らしいしっかりとした浅田先輩の隣に並ぶと、俺と一緒に歩き出した。
「先輩は何か買わなくていいんですか?」
小国先輩から頼まれたカフェオレを見せると、浅田先輩は苦笑した。
「悪いな、敦志機嫌悪かっただろ?」
「珍しいとは思いましたが、先輩も人間ですから」
逆に、気を使われず当たられる位置にいることが少し嬉しかったりもする。
「浦田出ていってすぐ、あいつ凹んでな。自分でも苛々を浦田にぶつけた自覚があるんだろう」
どこか父親のような言い方が可笑しくて笑ってしまう。いつもは年上らしい小国先輩でもやはり同級生の前では至極自然体なのだろう。
可笑しいと笑うどこかで、少し寂しくも思う。
人との付き合いに年齢など関係ないと思うのだが、今、青春真っ盛りの俺達にとっての一年は酷く速いものでありながら、大きなものでもあった。
「綺麗な絵画ですね」
考えてもどうにもならない命題を打ち消す為に、俺は手の中の缶に視線を集中した。
「先輩は知っていますか?ミュシャって??」
一度だけ、小国先輩が西洋画のポストカード兼作品集のような小さな本を読んでいたことを思い出した。確か、こんな画風だった気がする。
「あぁ、敦志が好きなんだよ。アルフォンス ミュシャ、アールヌーボーを代表する芸術家だよ」
「詳しいんですね……」
聞きなれない横文字を迷いもせず発する浅田先輩も、きっとこの分野に長けているのだろう。
見た目と反する趣向に、素直に驚きが顔にでる。
それに気付いて浅田先輩は豪快に笑ってみせた。
「敦志の影響だな。人の家に勝手に画集を置いていく。重いし悔しいから持って行ってやらなかったら、気付いたら本棚埋め尽くされててな」
迷惑だと笑う浅田先輩は決して不快そうではなかった。
 
「アールヌーボーっというのは19世紀に流行った装飾芸術なんだけど、当時の日本文化の影響も強かったって言われている。ミュシャの絵は日本の画家に模倣されたりもしている。どっちが先に影響受けたのかわかんねぇところが面白いだろ?」
 
後ろから伸びてきた手に、白い缶を奪われる。
これを渡すべき人物だと声で直ぐにわかったが、向っていた方向と逆から現れたことには驚いた。
一口カフェオレを飲んだ小国先輩は風呂上りのオヤジのように、大きく息を吐いてみせた。
「落ち着きましたか?」
そういうと、照れ臭そうにオゥと言った彼を挟んで三人で生徒会室を目指した。
俺はミュシャにはなれないなぁ、隣で甘い甘いと門違いな文句を垂れている先輩の影響を受けるだけ受けているから。
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