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4月5日(木)
そんなに経っていないようだが、酷く遠く感じる。最後に平良の家を訪れたのはいつだったっけ??確か、恵胡と二人で昼食係に当たった日じゃないだろうか?
チャイムなんか合図程度にしか使わなかったのに、今日は律儀にドアが開くのを待つ。
「よ、入れよ」
少しぎこちない態度で、平良は俺を中に招き入れてくれた。
「何がいい??」
飲み物を聞かれることも新鮮だ。いつもは勝手に冷蔵庫を漁ってたっけな。
「適当で」
そう笑うと、少し驚いたように平良も笑った。
「じゃぁ、コーラにするぞ」
「それは勘弁」
一年ほど前になる出来事を、皆が皆覚えていてネタにしていることが可笑しくて笑ってしまう。
珍しく通されたのはリビング。大きな革張りの黒いソファーに腰掛ける。
泊まりの時などはこの部屋も使うが、行儀の悪い俺らがこのソファーを使う事を平良は嫌っていた。
出てきたのは薫り高い紅茶。
流石平良の家だ。
「この前はすまない」
目線は上げないまま、平良が謝ってくる。先に言葉を発せられたことが、酷く悔しい。
「今日は俺が話していいか??」
視線が絡むことなく、平良は頭を軽く揺らす。
「こっちこそ、この前は急に悪かった。酷く驚かせて……でも本当のことなんだ」
平良は微動だにしなかった。
「最初はそんな感情抱いてなかったんだけど、今は困ったほど、離せなくなってる」
心地よい腕、温かいもの。
「………恵胡に流されているだけ、っとは思わないのか?」
「流されてる?か。そうかもな、恵胡の流れに完全に飲まれてしまったんだろうな」
「じゃぁ!………岸に上がれば、いいだろう」
流れから届かぬところへ行けと?
「それは無理だ」
「どうして!!」
「流れの中にいる方が心地良いし、温かい」
弾かれたように顔を上げた平良に、俺は微笑んだ。流されて、流されて、飲まれて……一体になる。それでいい。それがいい。
「今は俺もその流れの一つなのかもしれない。恵胡と同じ意味で恵胡が好きになっているんだ」
恵胡が他の誰かを抱きしめるなんて許せない、口付けを落とすなんて嫌だ。恵胡に抱き締められたい、抱き締めたい。
好き、という言葉を、恵胡にさえ言ったことのない言葉を発したことに照れがあったが、それ以上に誇らしかった。
そう胸を張って言えたことが、酷く嬉しかった。
「ごめん……急に来て言いたい事だけ良い散らかしてるな、俺」
「それで彰は幸せなのか??」
幸せとはなんだろうか??主観的なものだし、明確な基準が無い。甘いとか苦いとは違う、表現のし難いものだ。
 
「幸せってよくわからない。それでも、不幸だとは思わない」
 
平良が綺麗に笑った。
「ならば……いいんだ。きっと、それでいいんだ」
言葉よりも、その表情が物語っていた。
晴れ晴れとした気持ちを抱いて、俺も笑った。
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4月4日(水)
インターネットやら、掲示板やらで今は人と合わずに少しやばめの情報が手に入ったりする。
実際に、恵胡と向き合うと決めた時に色々と調べたものだ……フィクションだろっと問いたくなるものも多かったが、勉強になったことは確かだ。
「恵胡は?」
「合宿」
「かぁ~~、お互い相手が不在の時に預けるなっつぅの。俺は保父さんかって」
保父さんにしては柄が悪いと思うが、預けられた(?)側としては文句が言えない。
「こんな時、平良の家でも行けりゃなぁ~」
「明日行ってくる」
「だと思った」
コンビニで買ったペットボトルを持ち、俺らはあても無く歩いていた。自転車でもいいのだが、今日の本題はしゃべる事。相談する事。喉の渇きを潤す水分と、ゆっくりと風景を楽しみながら歩ければ十分だ。
「よくわかったな」
そこまで予測されていたとは思わなかったので、純粋に驚く。
「彰、会った時から顔が違ったしな」
そんなに表情に出ていたのだろうか??本当に、こいつらと付き合うようになってからポーカーフェイスがどこにやらって感じだ。
「そ、か。やっぱさ、俺の気持ちも平良に知ってて欲しいしさ」
温かい腕、大切なもの。最初はただ無くしたくないという思いだけだった。心地よいもの。愛しい者。
恵胡のように堂々と、俺の気持ちも知ってもらいたい。
断られることを覚悟で昨日送ったメールには、明日の日付が返ってきた。
やっぱりそのメールを見た時は嬉しかった。
冷酷な人間だと思って諦めることが酷く簡単なことで、意を決して心を言葉にするのは勇気と辛さがあるけど、温かいものではないかと思う。理解できても、心がけることはまだできないかもしれない。それでも、そう思えたのなら行動してみたかった。
「頑張れよ」
「何を頑張ればいいか、わかんないけどな」
人気の無い道に入った。住宅地の外れ。コンクリート敷きではあるが、辺りに生い茂る木々。
人に聞かれたくない話をするには……ぴったりかな?辺りを見回し、人がいないことを確認する。
「それでな、今日は俊に質問があったんだ」
ついつい下手に出てしまうのは、話す内容の所為かもしれない。どうして自分がこんなことを口に出さなくてはいけないのだろうか、っと思う。まだ一言も本題に入っていないのに、頬が熱くなる。
「お、今日のメイン??俺に答えられることならどうぞ」
好奇心が見え隠れする瞳。それでも、俺は一人で悩むより俊に相談することを選んだ。
「あのさ………俺と恵胡、もしも………なんてか、ヤルとしたらどっちが女の立場だと思うか??」
俊がジュースを口に含んでいなくて良かったと思う。それでも、気に障ることは確かだが。
一瞬、表情が止まったかと思うと、直ぐに俊は噴出したのだ。
「え、マジでその質問??彰真面目な顔して??」
腹を抱えて笑い出しそうな俊を見て、相手を間違えたかと思った。
「いや、怒るなって。かなりびびっただけだって」
言っているこっちの方が恥ずかしいのだ。
「最近……恵胡の態度があからさまでさ……」
「あぁ、やっぱあいつ手早いんだ」
「なっ……、まだ何もしてないからな」
そういえば、始業式までに返事を貰わないでいて欲しいと願っていたのは自分だったっけな。その自分が返事をする側になるとは思ってもみなかったが。
「とりあえず、性欲の有り余るお年頃だろ??彰が言ってんのは、入れる入れないの問題だろ。入れなくてもいいんじゃねぇの?」
あまりにも俊が普段の会話のように話すので、赤面したり言いかけた口を塞いだりと俺は忙しい。
ちゃんと知識として持っているつもりでも、こうやって人から話されると違う響きを持つものだと思う。
「いけりゃいいだろ。フェラに素股に手コキに色々あるっしょ」
「そりゃ……色々あるが、もし入れる入れないの問題になったらどっちが入れるんだ?」
いずれは、その時点に辿り着くのだろうし……率直な、それでいて重みのある俊の意見が欲しかった。
「そうだなぁ……今んとこ恵胡って感じだな。ま、体格もわかんねぇし、精神的に勝った方じゃないのか??」
確かに、身長は俺の方が高い。力や体重では負けているが。
「ふむ………精神面だな。つまりは恵胡を言い包めれればいいんだな」
なんだか明るい光が差してきたような気がして心が軽くなる。
「……多少勘違い入ってる面があるような気がするが……ま、いいか。攻防戦も頑張れよ」
「おう、絶対勝つ!!」
俺は空へ向けて拳を突き上げた。
4月3日(火)
「しょっぱい」
阿呆かと言おうかと思ったが辞めておいた。今言葉を発すると、やけに上ずった声がでて恵胡をご機嫌にするだけだと思ったからだ。
我ながら無防備だと思う格好だ。
恵胡の部屋、ベッドに凭れ掛かった恵胡の膝の間に座り、恵胡に凭れ掛かっているのだ。
普通ならば、俊でも呼んで予防策を取るところだが、今日は妹が友達を連れてきているのだという。台所からは鈴を転がしたような声がしてくる。皆で集まってケーキを焼くなんて、可愛らしいことだ。
流石に妹を可愛がっている恵胡らしく、壁一枚隔てたこちらで迫ろうとは思わないようだ。
そうなると、やけに安心して眠くなってしまう。大きな欠伸を二つ。それに反応した涙腺をペロリと恵胡が舐めたのだ。
恥ずかしいことをさも当たり前のようにやる恵胡には、どう反応していいのかがわからなくなる。
「………おい」
「だってぇ~年頃の少年だよ。しょうがないって」
そういうものなのか………一体今の行動の何処に興奮する箇所があったのか、箇条書きにしてわかり易く説明して欲しいものだ。
大きな溜め息を漏らすと、髪の毛に優しくキスをされた。
「なんだか、彰をナかせた時を思い浮かべちゃってさぁ~」
「………想像力がご立派なことで」
少しずつ、こいつが色馬鹿だということがわかってきた。俊の予想は当たっていた訳だ。
甘い、バニラエッセンスの香りが辺りを満たし始めた。
隣の少女達の声が、狭められ、膨らみを繰り返し始めた。えぇ~本当に、あたしタイプじゃない、等の声が聞こえてくることから、定番の好きな人発表でもあっているのだろう。
「夏希ちゃんの好きな人が聞こえるかもな」
少し眉を寄せて恵胡が壁を睨む様子が可笑しい。
「俺に決まってんだろぉ~」
不貞腐れているところを見ると、既に恋心に目覚めていることを知っているのだろう。そんな恵胡が可愛くて、思わず後ろを振り返り頬に口付ける。
「可哀相なお兄ちゃんに」
回された腕に力が篭り、首筋に顔を埋められる。
「あぁぁ~二人っきりなら散々ナかせるのになぁ……」
「馬ぁ鹿、隣に夏希ちゃんいるのわかってるから安心して出来るんだろが」
なかせるってなぁ……どういう意味で言ってるんだ?恵胡は。
温かい腕。心地の良いもの。
4月2日(月)
昨日彼女からきたメールにはこう書いてあった。
『明日、中学校の校門前に10時に来ちゃ駄目だからね。来たら絶対嫌いになるからね(パンチマーク)』
意味が不明だと思いながらも、カレンダーを見て納得した。
「あ、平良君、どうしたの??」
本心な訳がない。偶然のような台詞を吐きながらも、これから行きたいところは映画なのか、それともゲーセンなのかと問いたくなる格好をしている。
「特に意味はないよ」
昨日のメールなど見ていなかったように乗れば、行くよっと彼女が前を歩く。
「また変なメール送ったよな」
向かっているのは駅だろう。繁華街でもないところを二人で並んで歩く事が、少し恥ずかしい。顔見知りだって沢山いる場所だ。
「う~ん。なんか友達が真逆メール送ってるの見てたら、なんだか私も送りたくなってさ」
それで選ばれたのが俺という訳か。得役だったと思う。お陰で今日彼女と出かけることが出来るのだから。
「ごめんねぇ~平良君には迷惑かけちゃったかな?」
「告ってきた相手にそれはないだろ??」
少し意地悪に言うと、彼女は黙り込んだ。それが可笑しくて思わず笑みが漏れる。
「平良君、今のはずるいと思うけどな」
ごめんごめんと平謝りするけど、顔から笑みが取れない。それを見て彼女は更に不機嫌顔になる。
「あぁぁ~もう。周りはどんどん彼氏作っていくし、平良君優しいし、流されちゃうじゃん」
唇を尖らせる動作を可愛いと思いながらも、同じように不貞腐れる少年を思い出した。
零れる笑顔は本当に太陽のように明るく、そこにいるだけで光の当たる雰囲気に変えてくれる少年。それでいて、走っている顔は羨ましいほど真剣で美しい。
「どうしたの?」
急に真面目な顔して黙った俺を不審に思ったのか、彼女が覗き込んでくる。弾かれたように顔を上げると、益々不思議そうな顔をした。
「いや………もしもさ、友達に彼氏が出来て、それが自分の認めたくない相手だったらだろうする??」
「認めたくない??信用できないとかかな……そうね、反対はしないかな。取りあえず、反対されると盛り上がるものじゃん?だから経過を見て、本当に気に入らない奴ならば落ち着いてきたあたりで説得して、本当はいい人ならば見方を変えるかな?」
盛り上がる、というアドバイスは有効ではない二人だ。黙りきった彰からは、彼が傷ついたことが感じられた。
――――見方を変える、か。
「平良君がそんな話してくれるってなんか意外」
「そうか??」
他人の恋愛話なんて無関心に見えるのだろうか??それとも酷く疎く見えるのだろうか?
「でも、いいと思う。なんだか嬉しいし」
にっこりと笑い、彼女は俺の手を取った。急ごう?っと笑う彼女に、やっぱり得役だと思った。


流漣)本日は4日分です~今週末に追いつけるでしょうか……今日は珍しく早く帰れたのですが、帰りに寄ったカフェのパフェにキュウイが入っていたらしくダウンしちゃいました。アイスとチョコにまみれて気付けなかった……アレルギー持ちです(´ω`)
4月1日(日)
気の滅入る天気も昨日で終わり、驚くほどの晴天だ。
そこを分ける一本の白い線。
新幹線で二時間の距離だし、見送りだってあっさりしたものだったはずなのに、何故だか兄貴を思い出した。
この季節は、別れを感じさせる所為かもしれない。
遠くないっと分かっていても、高校生の俺には県外というだけで酷く遠く感じる。
大陸が違う訳じゃないし、大学行ったら免許取って帰ってくるから。っと母親に言っていた。母も母で、馬鹿ね、お金使うでしょ。大学はお金掛かるんだから、一生懸命勉強しなさい。と返した。
本当に、親子とは似るものだ。不器用だなぁっと二人を見ていた。
もしかしたら、俺もそんな不器用な人間なのかもしれない。
当事者であるはずなのに、あの時、あの公園で一番部外者のようだったのは俺だった。
事を起こした俊、堂々と事実を告げた恵胡、それを受け入れ切れないと言った平良。では俺は??
やはり、人間の本質は簡単にはかわらないな……思わず、外にいるのを忘れ苦笑してしまう。
どんなに結城達にかわったと称されようと、恵胡の温かな腕に温められようと、俺は淡白な人間なのだろう。
冷酷で、自己中心的で………考えているだけで自己嫌悪に陥るようだ。
本当に、それでいいのか?それで納得していいのか?そんな自分でいいのか??
溜め息すら冷たく感じる。
簡単に答えを出せない俺だから、春の休暇にこの難題を突きつけられたことは歓迎すべきことなのかもしれない。
もう少し考えたくて、俺は飛行機雲の端っこを追った。
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