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4月10日(火)
シャーペンが一本無いのに気が付いたのは三限目も途中だった。
昨日生徒会室に忘れたのだろうと思い、昼休みに覗いてみた。いつものこの時間に人がいる事は滅多に無い。それなのに今日は、一番窓際の席に、突っ伏して岡田が外を眺めていた。
「珍しいな」
「うぉ!!!浦田じゃん、どうしたの?」
「シャーペン」
案の定、昨日座っていた席の下に落ちていた。元々予備として持っていた分なので、無いなら無いで支障は無いが、筆箱を持ち歩く習慣の無い二人がいつも傍にいるので無いと不安なのだ。
目線の高さに掲げて見せると、岡野が納得したように表情を緩めた。
「なんだ~小国先輩の差し金かと思っちゃったじゃん」
ちょっと困ったように笑い、岡野は再び腕に頭を乗せた。昼休みもそう残っていないのに、焦った様子は無い。室内の他の人間がいるのに、気にした様子もなく窓の外に意識を飛ばしている。
―――――小国先輩の差し金かと。
数ヶ月前まで自分に向かってきていたラブコールを思い出す。最近言わなくなったなぁっと思ったらこちらに行ったか。卒業式の激励会の件で、根回しや情報収集に当たっていたのが岡野だ。副校長の弾圧の後も、懸命に周りを励ましていたっけ。
最初はそんなにも適任だと思わなかったが、あの一件以来、確かに岡野のポジションがかわってきている。改めて考え直すまで自分は気付かなかったが、小国先輩は早々に感じ取っていた訳か。
「五月のことだろ?」
岡野の前に座る。飛んでいた意識は戻ってきたようだが、こちらを見ようとはしない。図星だが、触れて欲しくないのだろう。
「俺、岡野は適任だと思うな」
「……浦田、マジで言ってる??俺小国先輩みたく頭言い訳じゃねぇし、浅田先輩みたく後輩に慕われる主将な訳じゃねぇしさ……成績平凡、帰宅部の俺が生徒会長なんてありえねぇだろ?」
確かに、諸先輩の肩書きに比べると、岡野は劣るものがある。
「肩書きは肩書きだろ。ちゃんと見ている人間には、そんなもん関係ないと思うけどな」
「見てるって………」
「少なくとも、小国先輩はちゃんと見てるんだろ」
岡野が恨めしそうにこちらを見た。やっとこっちを向いた。
「俺、浦田の方が適任だと思うけどな」
「そうか?俺は裏方が似合うタイプなんだよ」
「………確かに、浦田って裏番長って感じだもんな」
あまりに岡野が無邪気に言うので、反撃の意味も込めて無心で見下ろす。直ぐにその視線に気付いたのか、姿勢を正すとこが可笑しい。
おんぼろなスイッチが入ったように、電気回路の繋がった音がしたかと思うとスピーカーから予鈴が鳴る。
「浦田、授業」
「そう言うなら、岡野もだろ?もうちょい悩むのか??」
「う゛………」
「付き合うぞ」
ありがた迷惑そうな顔をした岡野を見て見ぬ振りして、俺はそこに居座る事にした。
小国先輩の見込んだ奴だ、なんとしてもやる気を起こさせねば。
岡野がうんと言わなかった時、再び白羽の矢が俺に立たないようにもな。


流漣)久々のUPです。ごめんなさい、ちょっと刹那への愛情が薄れてました……二人の関係が穏やかになった所為でしょうか??五月(お題消化日付)になったら波を入れるつもりでしがた、良い題があればもう投入したいと思います。
今日は5日分UP。
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4月9日(月)
校内に不自然なまでに花が置かれていた。卒業式とも違う、鮮やかさを放って。
あぁ、今日は入学式なんだと実感が湧いてくると、自分達も一つ学年が上がったのだという実感も湧いてきた。
「おぉ~~初々しいねぇ~」
俊が窓の下を眺めながら言った。
中学校の時とはまた違う、制服を着慣れていない感じがする少年達。
この学校がガクランなら、こんな感じを受ける事はないのだろう。
「俺らも一年前はあんな感じだったんかねぇ~」
「俊は一年の時から着崩してただろ?」
確かに恵胡の言う通りだ。俊は一年の早々からネクタイを崩して、第一ボタンを開けてきていたのを覚えている。自分とは関係のない人種の人間だ、と思ったものだが、今では友人だ。世の中とはわからないものだ。
「遅刻しそうだったしなぁ~」
「それを言うなら恵胡も酷かったぞ」
「へっ??俺何したっけ??」
恵胡が最初から着崩していた記憶はないが……平良が楽しそうに口を開く。
「入学三日目で、ズボンを間違えてきたのだ誰だったっけな??」
「あぁぁぁぁ!思い出した。俺確か、ガクランのズボン履いてきた!」
なるほど、藍色のブレーザーに、灰色のチェックのズボン。それなのに、恵胡は中学の頃の黒ズボンを履いてきたのか。すっかり忘れていた。
「そういえば、そんな奴がいたな」
「いたいた~~あれって恵胡だったのか??マジうけるし!」
俊が腹を抱えて笑っている。その様子を見て、恵胡が不機嫌になる。
「たまには間違えるだろっ!」
的外れな反論に、益々笑いが激しくなる。
窓の外のいる新入生達。揃いも揃って灰色のズボンばかりだ。やっぱり、間違えてくるはずないよな、っと思うと改めて可笑しくなった。
4月8日(日)
寝返りを打つと、目の前にあった恵胡の顔に思わず赤面してしまう。脳に血液が急に回ってきた所為で、腰に回された腕に気付いた。いつの間にか、恵胡に抱き絞められていたようだ。
こんな場面を俊にでも見られたら、なんて言われるかわかったもんじゃない。
俺は恵胡を起こさないように、そっとその腕を外した。
昨日用意されていた揃いのパジャマ。白いシーツの上で、様々な色が踊っている。
いつもはジャージを持ってくるのさえ面倒で、適当に平良の服を着て寝ていた。
布団も来客用を勝手に出してきて寝ていたが、パジャマと一緒に俺ら用布団まで買い揃えたらしい。普段家で使っている布団の二倍近くは有りそうな厚さ、そして柔らかさは明らかに羽毛であった。
普段からあまりいない両親のことを、子ども扱いをするっと不満を漏らしていた平良。でも、きちんと愛されているんだなぁっと思う。子ども扱いするのも、普段から接する時間が少ない所為なのではないか。
真っ白で糊のきいたシーツに、火照った頬を乗せると冷たくて気持ちがいい。恵胡と向き合うのが恥ずかしくて、折角寝返りを打ったのにまた同じ方向を向く。
俊に間に寝て欲しいと頼んだが、『俺に馬に蹴られろと??』と嫌味を言われた。
平良はいつもと変わらず接してくれた。
ただ、寝る前に『俺の家ってこと忘れんなよ』と念を押してきたことが可笑しい。
ふと後ろで動く気配があった。
恵胡が起きたのだろうか?と思った瞬間再び腰に手が回ってくる。
思わず解こうと手を伸ばした時だった。
 
「彰」
 
耳元で呟かれた。生温かい息がリアルで、思わず動作が止まる。なのに、動悸は早くなる一方で、触れられたところが熱い。
「恵胡」
小声で話しかけるが反応が無い。耳元では規則正しい寝息が聞こえる。
恵胡には寝惚けて抱きつく癖があるのではないだろうか……さらに擦り寄ってきた恵胡を感じ、そう思った。
目の前には壁、後ろには恵胡。逃げ出す事もできるだろうが……そんな気力もなく、俺は再び眠りへと落ちていくことにした。
4月7日(土)
金持ちの考える事は、時々わからない。
俊から泊まりにこないか?っとメールが入っていたので、俺ら三人は揃って俊の家に行く事とした。
昨日の今日という訳ではないが、俺と恵胡をセットで泊まりに誘うことに何も感じていないはずがないんだが……勿論、俊もいるという安心感があるのは確かだ。
「おぉ、よく来てくれたね」
出迎えてくれたのは、いつもいない平良の父親。
「あらあら、いらっしゃい」
その後ろにいるのは、平良の母親だ。こうやって見ると、目許は母親そっくりなのだと気付く。
予想もしていなかった状況に、俺らは一瞬動作が止まる。だが、そこは流石俊。すかさず笑顔を作り、いつもお世話してます~なんて軽口を叩けば、両親が揃って嬉しそうに笑った。
「さ、上がって、平良ちゃ~ん。恵胡君達来たわよ」
途端に二階から慌しい音を立てて平良が降りてくる。
「早かったな、とりあえず部屋に来い!!」
頬を赤らめている、取り乱している、普段の平良からは想像のつかない慌てぶりだ。
「まぁ、平良ちゃんったら、お友達の前でいけないわよ」
なるほど……『ちゃん』付けで呼ばれることに抵抗があるのだろう。だからといって、言い返さないところから、家の中での勢力関係が見え隠れする。
「まぁまぁ、ママ。平良だってそろそろいい歳なんだから、少し位言葉遣いも男らしくなるもんだよ」
ちょっと宥める方向性が違うような気もするが……。
「取り合えず、君らにあえて良かったよ」
「早く行けよ、遅れるぞ」
「あぁ、そうだったね。それじゃ、行ってくるよ平良」
やはり、いつものように彼らはどこかに出かけるようだった。
「恵胡君達、平良のことよろしくね。あと、気に入ってくれると嬉しいわ」
小さな旅行鞄を持ち、両親は優雅に家を出て行った。流石に展開の速さに、愛想笑いを浮かべて手を振る程度しか出来なかった。
「どうしたんだ??」
「どうしても、お前らを見たいって言われて……悪かった」
平良が年相応に恥ずかしがっている姿が新鮮だ。
「まぁ、俺らはいいもん見れたかな?な、恵胡ちゃん」
「おう、そうだな、俊ちゃん!」
予想した通り、すぐさま俊と恵胡は平良をからかうモードに入った。
「ところで、何を気に入るんだ??平良ちゃん??」
「あぁ、もう!五月蝿いなぁ!!」
頬を赤らめながら、二階に上がる平良の後を俺らは着いていく。相変わらず後ろの二人はちゃん付けで互いを呼び合っていた。
久々に感じる平良の部屋。中に入ると、ベッドに置いてあったのは………四着のパジャマ。赤、青、緑、橙のチェック柄だ。
「もしかして………」
「親父とお袋が、お前らにって」
「お揃パジャマ??」
「ペアルック!!!」
俊が近寄り、一枚ずつ広げて見る。
「もしかしなくても……色で人が決まってるのか?」
「………一応」
一枚ずつ若干大きさが違うようだ。つまりは……。
「色強制??俺どれだ!?」
「えぇぇぇ!!俺青がいい!」
どうみても、青が一番大きい。そうなると恵胡が青の可能性が有る訳がない。
「青、緑、赤、橙って順に大きいって事は……俺緑か??」
「じゃ、俺赤!?」
「恵胡、俺が赤でお前が橙だと思うが」
体格は恵胡の方がいいかもしれないが、身長となると別だ。そこを指摘すると、恵胡は頬を膨らまして抗議をしてきた。なので、その頬を両方から叩いて潰してやった。
「成長期のガキにこれはないだろう」
「………小さくなったらまた買ってくるから教えてね、だそうだ」
「おぉ~太っ腹な親父とお袋だなぁ」
妙なところに恵胡が感心している。早速着てみようと言い出した恵胡を黙らせて、俺らは本日の夕食を決めるべく一階へと降りて行った。
4月6日(金)
形式ばった始業式。新しい教師の紹介なんかもあったが、騒がしい俺たちの所為か紹介される側にも気力がない。
そんな中でもやったら気合のある人間よりも、我関せずで好きなことを堂々としゃべる教師の方が好かれたりするのだから、世の中ってわからない。
昨日まで合宿だった所為か、恵胡は舟を漕いでいた。
『おい、平良とはどうたったんだよ』
耳元に口を寄せ、俊が聞いてくる。
帰ったら近況を聞くメールが入っていたが、あの小さいボタンを繰り出して文章を打つのが苦手で面倒だったのでほっておいた。
『俺のことか?』
体を捻り、平良がこちらを向く。俊がばつの悪い顔をして見せた。
いつもと変わらない四人。
『ま、こういうこと』
平良に向けて目だけで笑って伝えると、平良も答えてくれた。その様子を見ていた俊が益々服の裾を引っ張る。伸びたらどうしてくれるんだ。
『わかんねぇって~』
『だから、こういうことだろ??』
『略してねぇで、最初から教えろよなぁ~』
拗ねる俊を見て笑うと、平良も笑っていた。まだ少しぎこちないけど、いつもの平良だ。
『そ、こういうこと』
平良の後押しもあり、俊は黙り込むしかなくなった。
不貞腐れた俊が、恵胡の脇を指で突付く。八つ当たりだ。
「うへっ!やめろストロング!!」
意味のわからない台詞を吐いて意識の浮上した恵胡を、周りは失笑する。その様子に頬を赤らめながら、俊に食いかかっている恵胡が可笑しくて、俺らも笑う。
『恵胡、』
平良が口に指を当て、笑っている。悪戯の成功した俊の機嫌が上昇している。
『そういう、こと』
そんな三人の姿を見て、俺は自然と笑みを作っていた。


流漣)本日は4日分です。一体いつになったら追いつくのか……物ってどうやったら無くなるものなんでしょうか???あ、散らかしてたら??←当たり前です。
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