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4月20日(金)
「あ、浦田先輩~!」
振り返ると、後ろから坂槻が走ってきていた。体育の後、教室に戻る為には一年の教室の前を通る。その時に俺を見つけたのだろう。
俺が止まるのに合わせたように、他の三人も止まる。
「誰だ?あの絵に描いたような後輩の姿は」
100%の笑顔で大きく手を振っている姿は、確かに俊が表現した通りだ。漫画や一昔前のドラマに出てきそうな姿だった。
「おぉ~眩しいなぁ。俺も素直で可愛い後輩が欲しい!!」
まだ部活が確定していない一年も多いので、今後どう転ぶかはわからないが、現在陸上部に入ってきた一年はとてもじゃないけど可愛いという言葉から掛け離れているらしい。砲丸投げやら槍投げやらが専門の奴らばかりだと恵胡が漏らしていた。
つまりは、一個上のはずの恵胡が、相変わらず陸上部では一番可愛いマスコットという訳だ。
その待遇に不満を抱いているらしい。
「昨日はお疲れ」
「あんま力になれなかったですよねぇ~次はもっと頑張りますから!」
上気した頬と少しぎこちない丁寧語。先輩という立場に慣れていない為、俺の方が緊張してきた。
「どうしたんだ?」
「あ、そうそう。先輩にプレゼントを。昔母の知り合いに貰っていたんですが、使わなくて……なんだか先輩に似合いそうだったから」
そう言って赤いチェックの小さな紙袋を坂槻は差し出してきた。
「ストラップです」
それにしては大きいような気がする。
拳ほどの大きさに膨らんだ袋。受け取ると少し柔らかい。これは………。
「うさぎ?」
開けて案の定、ぬいぐるみのような大きなストラップ。白いうさぎが両手足を広げて腹を地面につけるような格好をしている(確か、昔崩れたパンダみたいなキャラクターが同じようにだらしの無い格好をしていた気がする)。
「似合うか?」
 
「えぇ、とても」
 
無邪気に笑っているはずなのに………背筋に寒気が走る。坂槻は冷めるような瞳をしていた。
俊がからかってきているが、上手く反応が出来ない。他の三人は本気で坂槻が俺に似合うという善意で持ってきていると思っているようだ。
『あいつ結構性格きついから』
昨日聞いた小国先輩の言葉が反芻された。
耳が機能し始めた時には、人懐っこい顔で他の三人とも打ち解けはじめている坂槻がいた。
気のせい………だったのだろうか??
恵胡は自分より坂槻の方が背の高いことに腹を立てていて、俊はそれをからかう。平良がこんな上級生になるなよっと本気か冗談かわからない顔で説得している。
気のせい……だったんだよな。
手の中で小さなうさぎが、こちらを見つめていた。
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4月19日(木)
坂槻倫(サカツキトモ)と彼は最初に自己紹介をした。
小国先輩の従弟で、今年入学してきた一個下だ。選挙が終わり次第、生徒会役員に立候補したいのだと言う。人懐っこい笑顔と、それでいてどこか冷静に感じる瞳は小国先輩の親族だと感じられる。
「浦田先輩、先輩は生徒会長に立候補しなかったんですか?」
投票用紙の準備、それに伴っての委員会開催時の書類作成に追われていた。賢い子なんだろう。即戦力として、慌しい生徒会室の中でも何か仕事を見つけて励んでいる。
俺の目の間に座り、坂槻は資料のページ取りをしている。
左から右に、一枚ずつ用紙を取りながらしゃべっていても、その速度が落ちる事はない。
「俺が?向いてないからな」
「ふ~ん、確かに先輩は裏番長って感じですよね」
先日岡野に言われた言葉も思い出し、苦笑してしまう。自分では全くそういうキャラクターだとは思っていないからだ。
「確かに表立って動く人間ではないが、番長って柄だと思っていないんだけどな」
責め立てるようで、どこか優しい声。あぁ、自分は今、下級生と話しているんだと無意識に声色を使い分けていた。
なんだかそのことが不思議だ。
「そうですね、浦田先輩は裏番長と言うより、影で王を操る王妃って感じですよね」
小国先輩に目許が似ている。にっこりと坂槻が笑う。
あまりに綺麗に笑うものだから、俺は反撃できなかった。下級生相手に大人気ないと思ったのもあるが。
一本取られたとはこういうことを言うのだろうか?わからない。
最後の一枚を取り終わると坂槻は次の仕事を探して、生徒会室の中をうろうろとしだした。
 
「浦田!」
仕事も終わり、一人、二人と生徒会室からいなくなっていた。恵胡の部活が終わるまでまだ時間がある。ゆっくりと室内の片付けを行っていたら、小国先輩から声を掛けられた。
「先輩、まだ残っていたのですか?」
「失礼だな。一応まだ生徒会長なんだぞ」
「上司が早く帰らないと、部下が帰れない、っと語っていたのはどこのどなたですか?」
「そんなこと言ったか??」
調子のいい人だ。上弦の月のように、瞳が持ち上げられる。確かに、坂槻は小国先輩の親族なんだと思った。
「どうしたんですか??」
「いや……倫が何か言ってなかったか?」
「困った従兄とかですか?」
小国先輩の持っていたプリントで、頭を叩かれる。
ぺにょっと安物の紙らしく萎れ、痛みも無い。
「いやさぁ~あいつ結構性格きついから、どうだったかなぁって思ってな」
性格がきつい??何かの冗談だろうか。人の間を泳ぐように渡りながら、仕事を見つけては手伝う姿はとても好印象だ。もう直ぐ生徒会の一員になると思うと、とても心強い。
潤滑油のように、場を和ませ、人と人との軋轢に滑り込む存在が一人いると、組織とは自然と上手くいくものだろう。現在は小国先輩がその役を占める割合が大きい。岡野も柔らかなタイプだが、潤滑油となると少し真面目過ぎる。
「そうですか?いい奴だと思いますけどね」
「そうか………それならいいんだけどさ。従兄の欲目というか、ガキの頃からにいちゃんにいちゃんって寄って来る存在だったから可愛くてさ」
小国先輩が照れたように頬を掻いている。
「残ってる浦田達に迷惑になるかもって思っても、つい倫を喜ばせてやりたくてさ」
「心配する人物ではないと思いますよ。俺は好きです」
「そうか」
大人っぽいところがある人だとは思っていたが、今現在は、彼はとても親父っぽい。自分の子供の話をしている上司みたいだ。
「そうです」
念を押す為にもう一度強く言う。少しでも、小国先輩が余計な心配をしなくていいようにも。


**************
1年ほど放置でした(ぁ)
ごめんなさい。少しずつですが更新再開しようかと……88まではきちんと1年前書いていたのにUPしていませんでした。89からは1年ぶりなので若干文体変化してるかもです。
日付は去年のを採用して、祝日系も去年の手帳見ながら書きます~天気は今年のになる可能性大ですがw
取り合えず、ちょっとずつ!
4月18日(水)
心地いいような……それでいてもどかしい。
痒い部分は上手く手の届かない場所で、思いっきり指を伸ばしてそこを掻こうと努力する。時々掠める度に快感が走るが、中々思うほどの刺激を与える事ができない。
そんな浮遊感が広がる………。
「恵胡??何してる」
不思議な感覚に我に返り、急速に意識は覚醒した。
心地の良い午後一番。満腹になった体を投げ出し、青空に下で暫しの休息を取っていた。それなのに、目覚めてみると隣で寝ていたはずの恵胡が青空の代わりに俺の視界を埋め尽くしている。
怒気を含んだ声を理解したのか、目線が泳ぐ。
なるほど、これが夢の正体かと妙に納得した。
俺の右に付かれた恵胡の左手。そして、その右手は……俺自身を軽く愛撫していた。
勿論服の上からだが、微かに反応し始めている。
膝を曲げて蹴りを入れようとすると、恵胡はチェっと舌打ちをして隣に転がる。
「前にも言っただろうが」
「無防備に寝てる彰が悪い~」
どういう理由だ。
「最初は見てるだけで良かったんだけど、そんなの無理だと思わねぇ??」
溜め息を上空へと逃がす。一緒に体に溜まっていた熱も逃がす。
体が落ち着くと、上半身を起こしす。そこで気が付いたが、ワイシャツがズボンから出ている。カッと血が頭に昇る。恵胡が何をしていたのか、それを想像してしまった。
立ち上がり、恵胡に背を向ける。チャックを開け、一度全てのワイシャツを出してから綺麗に入れなおす……この後恵胡を怒るつもりでいた。何をしたのかはわからないが、破廉恥なことをしたのではないかと思っていたから。
まぁ……ある意味これもこれで、何を考えているのやら。
頭に昇った血は元に戻り、代わりに大きな溜め息が漏れる。
「恵胡、これなんだ?」
「あ、もう気付いたの??虫除け」
虫除けってな……、臍の隣に油性マジックで書かれた文字。『恵胡のもの』という五文字。
「本当は刺青とかでして欲しいんだけどねぇ~」
「なんで俺がそんなこと書かなきゃいけないんだよ」
「だってさ~俺のだって主張したいじゃん??」
じゃん??じゃない!!意味がわからない。ここまで阿呆だとは思わなかった。
再び大きな溜め息が漏れる。これはボディーソープで取れるものだろうか?
4月17日(火)
二年になったとしても、今月末にある公開演説、ゴールデンウィーク開けにある選挙が終わった後じゃないと後輩は入ってこない。
となると、まだ一番下っ端は俺らになる訳だ。
覚えきれないのか、メモに諸先輩の言う品を岡野は丁寧に書き込んでいた。
立候補は粗方出揃っている。現在の生徒会メンバーからは、書記の岡野と副会長(というより一年代表という感じだ)の海端尚吾≪ウミバタショウゴ≫の二人が立候補する。
他にも明らかに内定目当てと思われる奴や、剣道部部長、インテリで気に食わない同級生などが立候補している。
二人の勇士に小国先輩がお菓子やジュースを買って来いと命じたのだ。
五千円札を握らされ、学生としては大きなその額に一度付き返したが、浅田先輩などを指し、勿論ワリカンに決まってるじゃん、と言う小国先輩の言葉に握らされた一枚の札を返すことが出来なくなった。
ジュースとお菓子くらいなら、二人で十分だ。
岡野と二人で、連れ立って生徒会室を出る。
「やっぱり立候補することにしたんだな」
照れたように岡野が笑う。
「あぁ……自信は全然ないけど、小国先輩が推薦してくれたのが嬉しくてさ。浦田もありがとな」
こちらにも思惑があったので、礼を言われると申し訳なくなってしまう。
「ところで、岡野はもう応援演説、誰にするか決めたのか??」
普通は仲の良い友人が行う。もう決まっているかもしれない。
「う~ん、まだ打診中。やっぱ人前で話すとなると、引く奴が多くてさ」
「じゃ、俺にさせてくれないか?」
珍しいものでも見るような瞳で、岡野はこちらを見ている。
前を見て歩かないと転ぶぞ、っとどっかの誰かのように言ってやろうかと思ったが、そこは岡野。どっかの誰かならばこける段差も視界の隅で捉えているようだ。
「浦田が??いいのか??」
「俺じゃ役不足かもれないが、もしまだ決まってないなら俺にさせて欲しいんだが?」
「役不足だなんて……浦田にしてもらえるなんて、俺嬉しいし、心強い」
派手に両手を振って照れたように笑う岡野。泳ぐ視線は、決して気まずいからじゃない。嬉しさを隠せない恥ずかしさによるものだろう。岡野の表情を見てると、そう感じる。
それがなんだか嬉しくて、俺も照れてしまう。
なんだか恵胡に似てるな。
心の底から嬉しいと溢れ出てくる恵胡の笑顔。岡野も同じように、ハニカミながらも嬉しそうに笑う。
こんな笑う奴だなんて知らなかった。生徒会に入ってきた頃はもっと、静かに自己主張の少ない奴だった気がしたけど、岡野も一年で随分変わったんだ。
俺も……一年で随分と変わったもんな。
「よろしくな」
差し出した手を、笑顔の岡野が強く握る。
ほんのりと体温の上がった手は、とても柔らかかった。
4月16日(月)
揺れる結ばれた髪が、男子にも人気があったはずだ。
一度噂になった所為で、真相を茶化しながら聞いてくる奴もいない訳ではない。
情報システム科の柏田結菜がベリーショートになっていた。
恵胡の反応が悪い所を見ると、昨日何かがあったのだろう。その結果が柏田の髪の毛ならば、俺にとってはいいことであるはずなんだが………独りでいた家、当ても散歩、誘わなかった自分も悪いのだろうが、なんとなくムカついた。
「結菜ちゃん、髪切ってたな」
珍しく、屋上にいるのは俺と俊。二年生になり、運動場を思う存分使えるようになった。そうなると乗りもいいし、運動神経もいい恵胡に声が掛からないはずはない。放課後には更に過酷な練習が待っていることなど考えもせず、毎日のように運動場に繰り出している。
全く、小学生かと。
「恵胡と何かあったんだろうなぁ~」
暢気に俊が零す。俊も詳細は知らないのだろう。勿論、俺も知らないのだから返事は無い。
「………で、彰は何に拗ねてるんだ??」
「別に、拗ねてなんかいない」
「嘘こけ。今朝から機嫌悪いだろが」
大きく骨っぽい指が、俺の頭を撫でる。
相変わらず、侮れない相手だ。
「どうせ、結菜ちゃんと恵胡が二人で会っていたのが嫌なんだろ??当たり??」
無言の肯定。
「そういえば、お前髪伸びたよな」
いつの間にやら、俊の髪の毛はプリンになっている。後頭部で一束ゴムで纏めるのが最近、俊の定番の髪型だ。
「今更??願かけてるからねぇ~」
「願??俊って意外に乙女ちっくなんだな」
「ここ、突っ込むところ。別に意味はないけどなぁ」
ふっと細められた目と唇とか、冗談のようでどこか本気なのだろう。敢えて言うことはないが。
俊だけじゃなくて、自分も随分と彼を読み取るのが上手くなった気がした。
「俺も伸ばすか??」
「止めとけ、似合うだろうけど、恵胡が喜ぶだけだぞ」
なんだか、益々冗談じゃないビジョンが浮かんできた。伸ばすのは止めておいた方が賢明だ。
さらりと、撫でていた俊の指から零れ落ちた俺の髪が、屋上を這う風に反応した。
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