お題に挑戦しながら日々精進用
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4月16日(月)
揺れる結ばれた髪が、男子にも人気があったはずだ。
一度噂になった所為で、真相を茶化しながら聞いてくる奴もいない訳ではない。
情報システム科の柏田結菜がベリーショートになっていた。
恵胡の反応が悪い所を見ると、昨日何かがあったのだろう。その結果が柏田の髪の毛ならば、俺にとってはいいことであるはずなんだが………独りでいた家、当ても散歩、誘わなかった自分も悪いのだろうが、なんとなくムカついた。
「結菜ちゃん、髪切ってたな」
珍しく、屋上にいるのは俺と俊。二年生になり、運動場を思う存分使えるようになった。そうなると乗りもいいし、運動神経もいい恵胡に声が掛からないはずはない。放課後には更に過酷な練習が待っていることなど考えもせず、毎日のように運動場に繰り出している。
全く、小学生かと。
「恵胡と何かあったんだろうなぁ~」
暢気に俊が零す。俊も詳細は知らないのだろう。勿論、俺も知らないのだから返事は無い。
「………で、彰は何に拗ねてるんだ??」
「別に、拗ねてなんかいない」
「嘘こけ。今朝から機嫌悪いだろが」
大きく骨っぽい指が、俺の頭を撫でる。
相変わらず、侮れない相手だ。
「どうせ、結菜ちゃんと恵胡が二人で会っていたのが嫌なんだろ??当たり??」
無言の肯定。
「そういえば、お前髪伸びたよな」
いつの間にやら、俊の髪の毛はプリンになっている。後頭部で一束ゴムで纏めるのが最近、俊の定番の髪型だ。
「今更??願かけてるからねぇ~」
「願??俊って意外に乙女ちっくなんだな」
「ここ、突っ込むところ。別に意味はないけどなぁ」
ふっと細められた目と唇とか、冗談のようでどこか本気なのだろう。敢えて言うことはないが。
俊だけじゃなくて、自分も随分と彼を読み取るのが上手くなった気がした。
「俺も伸ばすか??」
「止めとけ、似合うだろうけど、恵胡が喜ぶだけだぞ」
なんだか、益々冗談じゃないビジョンが浮かんできた。伸ばすのは止めておいた方が賢明だ。
さらりと、撫でていた俊の指から零れ落ちた俺の髪が、屋上を這う風に反応した。PR
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