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4月17日(火)
二年になったとしても、今月末にある公開演説、ゴールデンウィーク開けにある選挙が終わった後じゃないと後輩は入ってこない。
となると、まだ一番下っ端は俺らになる訳だ。
覚えきれないのか、メモに諸先輩の言う品を岡野は丁寧に書き込んでいた。
立候補は粗方出揃っている。現在の生徒会メンバーからは、書記の岡野と副会長(というより一年代表という感じだ)の海端尚吾≪ウミバタショウゴ≫の二人が立候補する。
他にも明らかに内定目当てと思われる奴や、剣道部部長、インテリで気に食わない同級生などが立候補している。
二人の勇士に小国先輩がお菓子やジュースを買って来いと命じたのだ。
五千円札を握らされ、学生としては大きなその額に一度付き返したが、浅田先輩などを指し、勿論ワリカンに決まってるじゃん、と言う小国先輩の言葉に握らされた一枚の札を返すことが出来なくなった。
ジュースとお菓子くらいなら、二人で十分だ。
岡野と二人で、連れ立って生徒会室を出る。
「やっぱり立候補することにしたんだな」
照れたように岡野が笑う。
「あぁ……自信は全然ないけど、小国先輩が推薦してくれたのが嬉しくてさ。浦田もありがとな」
こちらにも思惑があったので、礼を言われると申し訳なくなってしまう。
「ところで、岡野はもう応援演説、誰にするか決めたのか??」
普通は仲の良い友人が行う。もう決まっているかもしれない。
「う~ん、まだ打診中。やっぱ人前で話すとなると、引く奴が多くてさ」
「じゃ、俺にさせてくれないか?」
珍しいものでも見るような瞳で、岡野はこちらを見ている。
前を見て歩かないと転ぶぞ、っとどっかの誰かのように言ってやろうかと思ったが、そこは岡野。どっかの誰かならばこける段差も視界の隅で捉えているようだ。
「浦田が??いいのか??」
「俺じゃ役不足かもれないが、もしまだ決まってないなら俺にさせて欲しいんだが?」
「役不足だなんて……浦田にしてもらえるなんて、俺嬉しいし、心強い」
派手に両手を振って照れたように笑う岡野。泳ぐ視線は、決して気まずいからじゃない。嬉しさを隠せない恥ずかしさによるものだろう。岡野の表情を見てると、そう感じる。
それがなんだか嬉しくて、俺も照れてしまう。
なんだか恵胡に似てるな。
心の底から嬉しいと溢れ出てくる恵胡の笑顔。岡野も同じように、ハニカミながらも嬉しそうに笑う。
こんな笑う奴だなんて知らなかった。生徒会に入ってきた頃はもっと、静かに自己主張の少ない奴だった気がしたけど、岡野も一年で随分変わったんだ。
俺も……一年で随分と変わったもんな。
「よろしくな」
差し出した手を、笑顔の岡野が強く握る。
ほんのりと体温の上がった手は、とても柔らかかった。
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