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5月4日(金・祝)
 
 
暗い部室だとか、スタンドだけの自室、シャワーで音の消される浴室。
そんなものが最初に浮かんでくるのに…………どうして俺は今、潮風に当たりながらエロ本を読んでいるんだ?
昨日は平良、今日は俊。
案外二人とも、合宿に恵胡が行ってこの連休にいないことを気にかけてくれているのかもしれない。
優しい友人を持ったものだ。
だからといって、昼のお天道様が燦々と降り注ぐ堤防で、男二人、何故ホモエロ本を読んでるんだ。
あ、訂正。読んでるのは俺だけだ。
俊は傍らにペットボトルを置いて、空を見上げている。
「どう?参考になりそう??」
「これ、どっから集めたんだよ」
「兄ちゃんに聞いたら、完全ホモの友達がいるからそいつが抜いてるおかず貸してくれた。あと、義姉さんの友達の腐女子さんから」
抜いてるとか余分な情報はいらないから…………。
「あ、それこの前恵胡にも貸したからなぁ~」
「…………はぁっ!!!」
一瞬、俊の言葉に脳味噌が活動停止を宣言した。
「彰だけに知識与えちゃ、フェアじゃねぇだろ?俊君ってば優しぃ~」
相変わらず空を見上げたままの俊の顔に、手に持った本を落としてやろうと思ったが借り物なので止めた。
かわりに俺の傍らにあったペットボトルで、腹を殴る。
「いっ、てぇ~」
反動だけで起き上がった俊の腹筋に拍手だ。
「あきらさぁ~口より手、早すぎ。あ、でも恋愛面では奥手か」
仕返しとばかりに、口で応戦する俊を睨み付けると、勝ち誇ったような笑顔に出会った。
悔しくて、視線を反らす。照れながらも本のページを捲る自分は、俊には勝てないなぁとどこかで思っていた。
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5月3日(木・祝)
 
「はじめまして!私服部【ハットリ】麻衣です。こっちが友達の林順【ハヤシジュン】。今日はよろしくね」
「あ、はぁ。浦田彰です」
「どうも、荒尾平良です」
「………よろしくお願いします」
茶色に染めたミディアムヘアーの大きな目をした少女が、噂の平良の思い人らしい。
今流行の脂ぎった唇をしていないところは好評価ではある。
少女の一歩後ろに隠れるように黒い長い髪をした少女がいる。
眼鏡をして少し俯いた表情が、彼女の性格を現しているようだ。
「行こうか」
元気よく歩き出す服部さんのスカートが、綺麗に風を含みふんわりと舞う。
真っ白なプリーツの入ったそれから伸びる素足は、健康的な色をしており本来は活発に動き回る子であろうことが窺えた。
 
駅で平良に言われた第一声は、彰って勿体無いよな。とのこと。
深緑色のロンティーに黒のダボっとした綿パン。
普段からもっと洒落た格好をしろと俊に言われているが、興味が無いのだからしょうがない。
昨日の晩、恵胡との電話の最中に入っていたメールは、Wデートのお誘い。
断ろうかと思って電話をかけた。
俺じゃなくてフリーな俊とかにすればいいだろうと提案した時に漏れた平良の本音に、つい引き受けてしまった。
『だって……麻衣ちゃんがあいつに惚れたら困るだろ……』
普段はあまり見せない、拗ねたような言い方。
だからといって、何も事情を知らない奴には頼めない。
恵胡は部活の合宿中。
消去法で俺しかいないという訳だ。
 
流行のアクション映画を見て、昼ごはんを平良の奢り(今日一日付き合う条件だ)でお洒落なカフェで食べ、ウィンドウショッピングをしていると自然と男女二組に分かれて歩いていた。
前を行く二人は、どう見てもカップルそのもので、俺と林さんはたいした会話もなくその数歩後ろを付いていく。
クスリと小さな笑い声がして隣を振り向くと、林さんが口に手を当てて期待を裏切らない笑い方をしていた。
「お互い……だしに使われただけだよね」
「……ぷっ、林さんも?」
「荒尾君が好きとか相談受けた事ないけど、どうしようか悩んでるって。でも……」
「ですね。どう見ても俺達必要ないよな」
「くすくす、私もそう思う」
ほんのりと染まったピンクの頬や、友達を思う瞳。
控えめだけど、決して気がきかないというわけではなく、気付かれなくていいと思っている善意。
工業系の学校にいるせいか、殆ど触れ合う機会の無いので気付かなかったが、確かに女の子って可愛いなって思える一瞬だ。
勿論、疾しい意味など無いので、心の中で恵胡に謝る事はしない。
 
林さんの瞳の先を追うと、今だ羽化したことに気付かない二人が楽しそうに指を絡めていた。



***************
100話いきました。そろそろサイトに校正してあげようかなぁ・・・。
5月2日(水)
 
「叔父さんが町の小さな電気屋やっててさ、そこに遊びに行った時、トランジスタとかダイオードとか、ハンダ付けさせてもらったのがきっかけかな」
 
そう、きっかけなんて些細なものかもしれない。
明日から始まる連休の天気は心配しなくていいと言うように、晴れ渡った空の下。
サッカーに夢中になっている同級生を眺めながら、珍しく恵胡が俺の隣に座った。
一番に動き回りそうな彼も、明日からの連休を寂しがっているのかもしれないと勝手に思った自分に照れ臭くなる。
何事にも楽しそうに取り組む彼に、道具を与えたくなった叔父さんの気持ちがわからなくもない。
無邪気なその笑顔を見たら、さらに彼の喜ぶことをしてあげたくなるはずだ。
「漠然と電気回路だとか、基板だとかに興味があった。で、彰は?」
「…………なんでだったか」
「忘れたの!?」
高校選択は、最初の大きな運命の分かれ道だ。
特に、専門分野に特化した高校を選ぶ事はこれからの人生の進む分野も決まってくる。
普通校を考えなかった訳ではない。成績だっていい方だったし、学級委員も生徒会役員も勤め上げた。
狙おうと思えば推薦だって勝ち取れた。
なんでだったっけ…………ぼんやりと、澄み渡った空を見上げる。
そこには、薄らと昼間の月が消えそうな姿をして浮かんでいた。
 
「顕微鏡……作ってみたかったんだ」
 
忘れていたこと。
そうだ…………確かに、そう思った時期があったからこの進路を選んだのだ。
「今あるものより、さらに小さなものを見ることが出来る電子顕微鏡を作りたかった。そして、物質の最小単位のさらに内部を見てみたかったんだ」
中学校の理科の授業中。やる気の無さそうな高齢教師の説明を聞きながら、自分の持った仮説を確かめたくなった。
なんてロマンティストな仮説だと思ったが、そうであって欲しいとも思えた。
「なんか、彰色々考えてるんだぁ~」
「物質って何で出来てるか?」
「へっ?」
空から恵胡に視線を落とすと、わざとらしく目線が泳ぐ。
「プラスを帯びた陽子の周りを、マイナスを帯びた電子が回ってる。その図を見て、宇宙に見えたんだ」
「宇宙?」
「太陽の周りを回る惑星、もしかしたら、自分達を形成する最小の物の中に宇宙が潜んでるんじゃないかって思った」
そんなこと……ありえないと思いながらも、自分の中に広がる無数の宇宙を感じて漠然と恐怖や喜びを覚えた。
「それを確かめてみたくなった。可笑しいだろ?」
「全然、それが俺と彰の出会うきっかけの一つだろ?俺、絶対忘れない!」
自分を形成する些細な話。
それに対して幸せそうに笑う恵胡。
面白味も何も無いと思っていた自分の生きてきた道だが、無性に幸せなものと思えてきた。




***********************
昔、科学の授業を受けながら漠然と思ったこと。
誰か証明してくれないかなぁ~(笑)
理科系の授業には萌えが含まれていると昔から思います。もう一回授業を受けなおしたい……もっと萌えを発見したかった(ぁ
5月1日(火)
市長選や議員選などを思い浮かべる姿。
中央玄関に並ぶ候補者達。
爽やかでやる気のあるイメージを植えつける為か、挨拶運動とやらを自主的に行っていた。
「岡野はやらねぇの」
「う~ん、なんだかその時期だけって感じで好きじゃないんだ、あ、おはよう」
偶然会った岡野と並んで教室へと向う。
確かに、この時期と選挙後一ヶ月ほどの名物習慣だ。
だけど、岡野のようにさりげなく挨拶をするのはもっと印象薄いと思うのだが、これが彼の信念なのだろう。
無意識に植えつけるように、岡野は擦れ違う人に挨拶を贈る。
「おはようございます、浦田先輩、岡野先輩」
絵に描いたような後輩、坂槻倫が後ろから小走りでやってきた。
にこにこと崩れない表情の坂槻。その好感の持てる姿に、岡野も自然と目許を緩める。
「おはよう、坂槻」
「おはよ~」
「なんだか選挙って感じになってきましたね」
坂槻の言葉に、岡野が苦笑を漏らす。
岡野の性格や信念をわかっている人間なら、彼が玄関に立たないことはわかるが、まだ付き合いの浅いこの後輩に言うべきか悩んでいるのだろう。
「でも、あと二日行ってまた休みって嫌ですよね~いっその事、連休にしてくれればいいのに」
「だなぁ~気締まらないよなぁ」
「確かにな」
自然に変わった話題にほっと安心する。
「先輩方は連休何してました?」
「なんかダラダラして過ごしたかも。今週末は流石に遊び行こうと計画中」
「浦田先輩は?」
「ダチの家に泊まって朝までゲーム」
恵胡という固有名詞を出しても分からないだろうし、何よりも…………連休前の噂が胸を掠めた。
 
「へぇ~いつもの四人ですか?」
 
この前廊下で会っただけなのに、よく覚えていること。
記憶力の良さは武器になる。
あぁ、と頷き、坂槻を見ると、ばっちりと瞳が合った。
以前勘違いだと思った……冷めたような瞳。
柔和に緩めた目許に似合わない底の無い色。
止まった歩調に岡野が急かす声が聞こえ、疑問を掻き消すように足を進めた。
4月30日(月・祝)
桜はもう既に散ってしまっている。
暖かくなった所為で、木々が元気を取り戻し緑を濃くし始めている。
「彰、眠いなら寝ていいからね」
助手席に座る母さんがガムを一枚差し出しながらこちらを向いた。
眠気すっきりな黒いパッケージのそれは、眠りを促しているように思えないのだが母さんに悪意はない。
そういう人だ。
いつもなら二人で座っていた後ろの席が広く感じる。
「別に……」
そっけない俺の態度を気に留めた様子も無く、母さんは前を向きなおした。
高校生にもなって……と思ったが、兄貴が出て行ってからどこか元気のない母さんを前に断ることはできなかった。
名前も覚えてない従姉妹の子供なんて、家族としての実感はほぼ無い。
それでも俺が一緒にいることで嬉しそうな母さんを見て、まぁいいかと思ってしまった。
先ほどからずっと、木々が窓の外を流れていく。
遠くに見える木、近くに見える木、同じ太さの同じ種類の同じ高さの…………自然だと思っていた風景が酷く不自然なものだと帰り道で気付いた。
「全部一緒だ……」
「当たり前でしょう。ここらへん全部植林よ」
独り言のつもりだったのに、母さんが俺の言葉を拾って驚いた。
エンジン音に掻き消されそうなほど小さな声。恥ずかしいのか……嬉しいのか。昔の俺なら恥ずかしくて冷たい言葉も吐いたかもしれないけど……恥ずかしい嬉しさというやつを教えた奴がいたから。
「全部?」
「そうよ、私が生まれる前位かしら、急成長で禿山になったこの山に大規模な植林計画が持ち上がったのよ。将来を見越して、材木になる杉を沢山植えたらしいわよ」
「あぁ、じいさんから聞いたことがある。当時林業を生業としていたじいさんは反対したらしい。一種の木を増やす事は森の生態系を崩すってな」
「……へぇ」
父さんのじいさん、つまりは曽祖父にあたる人間が林業をしていたなんて始めてしったし、いつも無口な父さんが知識を披露しているのも珍しかった。
「そうなの、いいことばかりだと思うのは素人考えだったのねぇ」
考えるようにトーンの落ちる母親を見て、それで上機嫌になる父親がいた。
あぁ、やっぱりうちは亭主関白に見せかけた嚊天下だ。
この前見たボランティアのドキュメンタリーで同じような内容を言ってなかったか?

思わず緩んでしまいそうになる表情を抑える為に、俺はまた不自然に並ぶ木々を眺めた。

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