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4月25日(水)
 
決して話し方が上手だとか、明確な確約がある訳ではない。
どこか抽象的なビジョンだけど、それでもしっかりとした何かを持っている。
 
『皆でこの学校を作り上げていきたい。お客さん感覚ではなく自分の学校だと自主的に行動できる学校にしていきたい』
 
自分の応援演説を書く為にも、演説内容には前もって目を通していた。抽象的すぎじゃないかと言ったのだが、岡野はこれでいきたいと言った。
そう思うのだったら自分はこれ以上言うことはないと、その時は気にもしなかった。
他の候補者のしっかりとした確約に多少不安になったが、彼の語り口を聞いて初めてあの時あそこまで岡野がはっきりとそのままでいいと言えたのかがわかった。
想いを語る岡野の話し方は決して上手ではない、そこで詰まるか、と苦笑したくなる場面もあったが………彼の目指すものはしっかりとしていて、その言葉には力があった。
 
「どう思われますか?」
「岡野?少し難しいかもしれないなぁ」
すっかり暖かくなったので、生徒会室は窓を開け放っていた。
ブレーザーも脱いでいたので、逆に少し肌寒い。椅子にかけていたそれに腕を通すが、小国先輩は相変わらず薄着のままだ。
「俺には、しっかりとしたビジョンが見えました」
岡野の目指すものは、小国先輩が中心となって支えた今の生徒会とはまたやり方が違う。
小国先輩と浅田先輩というどこかカリスマ性のある二人の先輩がいて、生徒の中心となって動かす現生徒会。
だが、岡野の目指すものは生徒が中心となりあくまでも生徒会は補助的役目、それぞれを繋ぐ糸のような存在。
評価としては前者の方が高いだろう。気遣いや多くの意見を集約するのは苦労がいる。その苦労に見合っただけの評価は得られない。それでも、岡野はその形にこだわった。
一年間小国先輩の下で、先輩のやり方に仕えてきたのにこの方向性の違いは、先輩に対する批判と捉えられていないかが不安だった。
「うん、岡野らしくていい、岡野を推薦した甲斐があったよ」
楽しそうに笑う先輩に、杞憂であったことがわかりほっとする。
「でも、難しい。今の年代に岡野の考えをきちんと理解できる人間はそう多くないよ。あとは岡野の人徳がどこまであるかだよな」
何処を変える、何か新しいことをする、そういう確約があるとわかりやすいので、全く立候補者を知らない人間でも票を入れやすい。
それに比べて岡野のビジョンはパッと聞いただけでは綺麗事が羅列されているようにも思える。
「俺は岡野に当選して欲しいと思うな」
微笑む先輩に同意の意味を込めて、俺も目元を緩めた。
さて、何処まで俺の人徳は使えるだろうか。
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4月24日(火)
「近場でいい、露天風呂付き離れに泊まりたい」
まず近場という段階で無理だとは思わないのだろうか?俺達の住む町を含めた観光雑誌。
どう見ても周辺に温泉マークはない。
あっても健康ランド的な温泉地とは程遠いものだ。
「嫌だ」
「えぇぇぇぇ!!」
「まずは第一にお金が無い、そして、恵胡と二人っきりなんて危険すぎる」
前者は勿論だが、後者は切実だ。
思った以上に性春真っ盛りだったこの馬鹿に、貞操の危機を感じるここ最近。
「う゛………」
図星だったのか、一気に恵胡の勢いが収束していく。
付き合って一ヶ月ちょい、案外手の早い恵胡と奥手なというか、一般的な俺。
「確かにさぁ………俺結構我慢してるけど……」
「どこが我慢なんだ?隙あらばって感じだろ」
うじうじと地面にのの字を書き始めた恵胡を一刀両断にすると、益々うじうじと縮こまっていくのが可笑しくて笑ってしまう。
「なんていうかさぁ~付き合ってるんじゃん、俺ら」
「確かにそうだけど?」
「その割には……付き合う前とあんまかわんないじゃん……」
確かに、相変わらず四人でいるし、一緒に帰るのは付き合う前から続いていたことで、最後にキスが一つ増えただけで以前となんらかわりはない。
「もっとデートしたり、いちゃいちゃしたりしてさぁ……思い出作りたいじゃん」
体操座りの膝の間から見上げる恵胡の瞳に、捨てられた犬が見上げているようなデジャブを覚える。
「っ、たく。夏休みバイトでもするか?」
とう言うと、恵胡は目を輝かせて飛びついてきた。
ワンと効果音をつけてやりたいほどの豹変。
なんだかんだで、俺は恵胡に甘いんだと思う。きっと。
4月23日(月)
「浦田!コーヒー買ってきて!!」
珍しくイライラとしている様子の小国先輩から渡された120円を握り、俺は1階にある自販機を目指した。
ミュシャの描いた白のカフェオレ、とのことだったが正直良くわからなかった。
まぁ、白と描いたというキーワードさえあれば十分かという予想があたり、自販機につくと一発でどれだかがわかった。
綿密な絵画のパッケージの缶ジュースが3種。その中で白は1種しかなかった。
応援演説を明後日に控えてるとはいえ、大きな式典前ほどは忙しくない。
生徒指導的にも、生徒会まで悩ませるほどの問題は起きていない。
滅多に声も荒げない小国先輩としては、本当に珍しい。
「お、いたいた」
自販機を離れてすぐ、浅田先輩がこちらへ向かって歩いてきていることに気付いた。
あちらも俺の姿を見つけて軽く手を振ったことから、目的が自分である事が窺える。
柔道部の主将らしいしっかりとした浅田先輩の隣に並ぶと、俺と一緒に歩き出した。
「先輩は何か買わなくていいんですか?」
小国先輩から頼まれたカフェオレを見せると、浅田先輩は苦笑した。
「悪いな、敦志機嫌悪かっただろ?」
「珍しいとは思いましたが、先輩も人間ですから」
逆に、気を使われず当たられる位置にいることが少し嬉しかったりもする。
「浦田出ていってすぐ、あいつ凹んでな。自分でも苛々を浦田にぶつけた自覚があるんだろう」
どこか父親のような言い方が可笑しくて笑ってしまう。いつもは年上らしい小国先輩でもやはり同級生の前では至極自然体なのだろう。
可笑しいと笑うどこかで、少し寂しくも思う。
人との付き合いに年齢など関係ないと思うのだが、今、青春真っ盛りの俺達にとっての一年は酷く速いものでありながら、大きなものでもあった。
「綺麗な絵画ですね」
考えてもどうにもならない命題を打ち消す為に、俺は手の中の缶に視線を集中した。
「先輩は知っていますか?ミュシャって??」
一度だけ、小国先輩が西洋画のポストカード兼作品集のような小さな本を読んでいたことを思い出した。確か、こんな画風だった気がする。
「あぁ、敦志が好きなんだよ。アルフォンス ミュシャ、アールヌーボーを代表する芸術家だよ」
「詳しいんですね……」
聞きなれない横文字を迷いもせず発する浅田先輩も、きっとこの分野に長けているのだろう。
見た目と反する趣向に、素直に驚きが顔にでる。
それに気付いて浅田先輩は豪快に笑ってみせた。
「敦志の影響だな。人の家に勝手に画集を置いていく。重いし悔しいから持って行ってやらなかったら、気付いたら本棚埋め尽くされててな」
迷惑だと笑う浅田先輩は決して不快そうではなかった。
 
「アールヌーボーっというのは19世紀に流行った装飾芸術なんだけど、当時の日本文化の影響も強かったって言われている。ミュシャの絵は日本の画家に模倣されたりもしている。どっちが先に影響受けたのかわかんねぇところが面白いだろ?」
 
後ろから伸びてきた手に、白い缶を奪われる。
これを渡すべき人物だと声で直ぐにわかったが、向っていた方向と逆から現れたことには驚いた。
一口カフェオレを飲んだ小国先輩は風呂上りのオヤジのように、大きく息を吐いてみせた。
「落ち着きましたか?」
そういうと、照れ臭そうにオゥと言った彼を挟んで三人で生徒会室を目指した。
俺はミュシャにはなれないなぁ、隣で甘い甘いと門違いな文句を垂れている先輩の影響を受けるだけ受けているから。
4月22日(日)
よくよく考えると、休日で四人集まる事は多くとも、四人で遊びに行くことは少なかったように思う。
特に目的の無い散歩。俊と散歩という名の相談をすることは多くとも、四人揃ってというのは珍しい。
既に桜は散っており、青々とした若葉を蓄えている。
毎日の登校で見ているとはいえ、見ることを目的に置いた場合と置かない場合では受ける印象は随分と違うものだ。
こんなことなら、先週変に意固地にならず声を掛けてみるべきだったと後悔する。
「平良~一口っ!」
「高いぞ」
「けちぃ~」
思いの他遠くまで来てしまった為、只今午後の一時であるが未だに平良の家に辿り着かない。
元はというと、俊と恵胡がムキになって自転車を漕ぐからいけないんだ。
止める俺と平良の声を無視して何処までも二人は走り続けた。疲れた体が、行きと同じ時間で帰り道をいけるはずがないのだ。
途中コンビニによって御飯でも買うには、それぞれの手持ちは少なすぎて軽いお菓子のみとなった。
今のコンビニには昔懐かしの駄菓子コーナーがあるのには驚いた。
ポケットの小銭を集め、各々百円程度購入したのだが…………ただ一人だけ一円も持っていない人物がいたのだ。
余りを出し合ってカンパしたが、集まったのは僅か21円。
キャ●ツ太郎一袋は、あっと言う間に恵胡の腹に収まった。
「まじでぇぇぇぇ、腹減ったって」
「うっせぇよ、恵胡。自覚すると腹減るんだからちょっとは黙ってろよ」
平良と目が合うと、お互い自然と溜め息が漏れた。
一時間位耐えれないものではないだろうが……そう思っても突っ込みを入れるのも体力が必要と考えたのか、どちらからも言葉は出ない。
そこまで考えない二人は、未だに餓鬼の言い合いのような喧嘩を続けている。
「もしも、恵胡にカンパした21円が全部1円玉だったら、それは魂と同じ重さなんだよな」
自転車の上で器用に蹴り合いを始めたが、俺らは気にもせず後ろをのんびりと走る。
「魂と?」
「そう、どっかの学者がさ、死ぬ瞬間に魂が抜けると思って実験したら21gだったんだって」
動きが大きくなった所為か、恵胡の後ろポケットに突っ込まれていたキャベ●太郎の袋が落ちた。
自転車の前輪でそれを止め、平良が袋を拾う。
俊がポイ捨てをしなくなったのは、平良のお陰だと常々思う。
「本当に魂ってあるのか?」
「さぁ、気のせいだと思うより、あると思ったが楽しくないか?」
手を出すと、平良は少し驚いた顔をしたがゴミとなったそれを俺に手渡してくれた。
別に…………意識している訳じゃないんだが……一応恋人が落としたゴミで、それを自分が責任持って捨てる立場にあるような気がしたのだ。
「夫婦みたいだな」
「そんなんじゃない」
遅れを取った二人を追いかける為にペダルを漕ぐ平良は、心底可笑しそうに笑ってくれた。
そっけなく返したつもりだったが、顔が熱いので意図したことは伝わってしまっただろう。
でも本意は教えてやらない。
そう思った自分すら恥ずかしいのだから。

零れ落ちた21円の袋が恵胡の魂の破片に感じたのは、平良の話の所為だ。


**********
この話から最近書き始めた分です~文体変わったりしてるのかなぁ??
4月21日(土)
嫌だなァと思う。ほんの数ヶ月前まで、体感したことなかった感覚。
くちゅくちゅと水音が室内に響く。
いつからだろうか?自分から応じるように舌が、唇が動くようになったのは。
さらには、気持ちがいいだなんて思うようになったのは。
「うんっ……」
漏れ出た声が、自分のものだと思うと本当に嫌になる。
「あっ………」
なのに、離れたら離れたで、急に寂しくなる。元々自分の舌、歯、それだけしかないはずの口内なのに、何かを無くしたような空虚な空間が出来る。
見上げると、慈しむように笑う恵胡の顔がある、
俺は本当にこの笑顔に弱い。感情を隠そうとしない瞳。空虚さと恥ずかしさにより、微かに揺れた舌を見逃さず恵胡は再び唇を重ねてくる。
積極的になることに恥ずかしさを覚える俺でも、恵胡のあまりの激しさに応じるように素直になる。毎度、唇を離すと途端に恥ずかしくなるが学習能力がどうしても働かない。
首に縋りつき、誘い込むように自分から舌を出す。
触れ合った部分からは恵胡の熱が伝わってくる。きつく回された両手は、何かに耐えるように俺の服を強く掴んでいた。
何に耐えているかなんて、聞かずともわかる。何故こんなに熱いかなんて、確認しなくともわかる。
本気を隠そうとしない時も、上手く冗談で包む時も感じている。恵胡の雄の部分。
わかっていながらも、こうやって二人っきりになる状況に身を投じている俺。それでも無理強いはしない恵胡。
俊に相談しても解決策などくれなかった。ここ一ヶ月ほど悩んでいても、未だに答えがでない。
 
「駄目?」
 
あ、デジャブ。そうか……。
「丁度一ヶ月前だな、同じ台詞言ったの」
「へっ?」
「祝日だからよく覚えてる」
一ヶ月前にこの部屋で、同じようにやばい位迫られたんだっけな。思い出すと、急に今まで濃厚だった空気が軽くなる。思わず表情に出た所為か、恵胡が拗ねたように目を細める。
「でも、それがきっかけで彰は素直になってくれたし~」
一度後退した方が得策と思ったのか、恵胡は力を緩めて俺の胸に擦り寄ってくる。雄の消えた恵胡は、本当に大型犬のようだ。
「素直って……」
「だってさぁ~俺の事好きで好きで堪らないのに、言い出せずにいたのはどっちだよ?」
「はぁ??」
なんだ、この自意識過剰な男は。誰が誰を好きで好きで堪らないと言っているんだ??
顔に出ていたのか、急に取り繕うによう恵胡が慌て出す。
「えぇぇ~彰~~機嫌なおしてよ」
慌てふためく姿は可笑しいが、耐えて表情を変えずに恵胡を見つめる。
「彰~~駄目なのかよぉ」
別に本気で怒っている訳ではなかったのだが、なんだか引くに引けなくなってきた。どうにかして、ちょっと復讐をしつつ許してやったことを表明しなくてはいけない。少しだけ……唇が寂しくなってきたから。
「視線が痛いから嫌だ」
「今日誰もいないってば~」
「違う、あれ」
俺は、壁に掛かる一枚のポスターを指差した。態々ショップに問い合わせて、傷物でもいいので展示が終わったらくださいと頭を下げて恵胡が貰ってきたポスター。ニューアルバムを出した彼女は、映画に出たりと歌手業以外にも幅広く活躍している。
どこか寂しげに、睫の影の落ちる瞳。ふっくらとした唇は色気がある。
指先の方向を見て、恵胡は一瞬固まる。
かなりのお気に入りのはずだ、どういう行動に出るだろうか?
「彰?それなりの覚悟を持って言ってる?」
あ………。
自分の選択が間違えていたことに気が付いた。見下ろしてくる瞳は、先程よりも野性の香りがする。
ポスターを剥がす為か、ベッドから離れる恵胡の腕を引き、唇を重ねる。
驚いて、一瞬動きが固まったが、直ぐに両手が回されてくる。
―――――剥がされてたまるか。
墓穴を掘るとはこういうことを言うのだろう。取りあえず、恵胡の意識をこちらに引きはがすことはできたようだ。
微かに瞳を開けると、光沢のある少女の写真がこちらを見ていた。
ダシに使って悪かったよ。
悲しげな表情が変わる事は無いが、先程よりも悲しそうに見えないのは俺の主観の問題なのだろう。
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